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品質管理と品質保証

管理と保証

 みなさんの会社には「品質管理部」はありますか?「品質保証部」はありますか?

 「品質管理」はやっていますか?「品質保証」はやっていますか?

 こんな質問をされて戸惑う事は無いでしょうか?『品質保証と品質管理って一緒じゃないの?』なんて思っていませんか?

 

【品質管理】

 品質管理とは、その字のごとく「品質」を「管理」する事です。品質(Quality)という言葉は意味がとても幅広く、メーカー側とユーザー側とではニュアンスや捉え方が違ってきます。ものづくりにおいては、品質は大きく3つに分けられます。

  1. 機能品質
  2. 設計品質
  3. 製造品質

 機能品質とは、ユーザーが求める要求を満足させるかどうかの度合いを表した言葉です。ドライヤーを例にあげると、「髪を早く乾かしたい」という要求をどの程度満足させるかどうかです。※ここではデザインなどは横に置いておきます。

 設計品質とは、「髪を早く乾かす」機能を実現するためにどのような設計にするのか、その良し悪しを表した言葉です。効率よく風を送る通風孔の形やモーター、持ち手など、どのように設計するのか?部品間のクリアランスをどの程度設けるか?などと言う部分です。

 製造品質とは、設計通りに作れるかどうかです。通風孔の大きさをΦ5cm±0.05にした場合、その公差内に安定して入れられるか?公差の中でも狙い値にどれだけ近づけられるか?といった部分です。

 

 ここでいう品質管理とは、設計品質や製造品質の事を指し、特に製造現場では製造品質を指します。つまり、設計通りの製品を作る為に、各工程・材料・人などをコントロールする事を言います。製造現場内の取り組みであり、ユーザーに見える部署ではありません。

 

【品質保証】

 では品質保証は?と言うと、「ユーザーが求めている要求を満足していますよ!」と宣言する事。宣言する為に必要な書類を用意することです。どちらかと言うと、対外的な部署になります。

下の図のようなイメージになります。

最終検査不正の問題

 自動車メーカーや航空機部品メーカーで、検査不正問題が報道されています。検査資格のない人が検査をしていたという事案です。殆どのケースで、問題があったメーカー側が『製品の品質には影響・問題はありません』という発表をする事が多いと思います。みなさんはこれを聞いてどう思いますか?

 私も含めて、ものづくりを理解している人はあまり違和感を感じません。それよりも、「車の品質を根底から揺るがす大問題!」なんて報道するメディアに違和感を感じます。つまり何が言いたいか?と言うと、これは品質保証の問題であって、品質管理の問題ではない、という事です。真意は後程。

 

 それに対して、リコール問題も大きく報道されます。『対象台数は平成26年から平成28年に製造された35,000台になります』などと報道されます。これは、私も含め、ものづくりを理解している人は『大問題』だと感じます。リコール問題は、品質保証の問題ではなく、品質管理の問題だからです。

品質管理こそものづくり

 極端な事を言ってしまえば、品質管理をしていなくても品質保証は出来てしまいます。品質保証は、所詮、宣言でしかありません。製品にどんな欠陥があっても、品質保証ができてしまいます。

 

 Amazonで人気があるのは、低価格なのに中レベルの機能品質を持った、日本では売っていない中国系の商品です。商品紹介には「高品質」「高性能」「高耐久」「1年保証」などというキーワードが書かれています。このキーワードが品質保証です。購入者は『ここに高品質って書いてあるじゃないか!』って文句を言います。1年保証なんて、2年目以降は問題が発生する可能性がある設計品質だ、と公言しているようなものです。

 

 先ほどの検査不正問題ですが、品質保証に問題があるのかもしれませんが、品質管理は何も変わりません。むしろ品質管理は、長年積み重ねられてきたものづくりの仕組みの上に成り立つものであって、そう簡単には崩れません。自動車メーカーの品質管理となれば、その下請け、孫請け、曾孫請けから脈々と作り上げられています。

 その仕組みに欠陥があったリコール問題と、宣言(最終検査)の方法に欠陥があった不正検査問題とでは、その恐ろしさが違うのです。しかしながら、どちらかと言うと、リコール問題はサッと流され、不正検査問題はズッと報道されています。

 

 今回は言葉の意味を理解して頂ければと思います。しかし、言葉の意味を知って頂ければ、本当に必要なのはどちらなのか?分かって頂けると思います。

 最後に、、、ものづくり改善の考えでは「検査はムダ作業」です。製造品質が保たれていれば、検査なんてする必要が無いのです。