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創業と事業承継

企業支援のトレンド

 私のような経営コンサルタントに限らず、商工会・商工会議所・銀行など各種支援機関が取り扱う支援テーマにはトレンドがあります。最近は「事業承継」「働き方改革」がトレンドになっていますね。このトレンドは、国の方針によって左右されます。各省庁の頭のいい人たちが、様々なデータを分析して、今の日本に必要な施策を考え、それがトレンドになります。

事業承継にビッグウェーブ

 正直、「事業承継」にビッグウェーブが来ています。国も大きな予算を割り当て、専門の支援団体や補助金を立ち上げて承継を促進させようとしています。

 福井県内に目を向けますと、それも至極当然の事です。福井県内には約40,000件の事業者が存在します。その内、経営者が60歳以上の事業者は60%を超えるのです。

【福井県内の事業者の年齢構成】

40,000社 × 60% =24,000社

24,000社は事業承継予備軍という事になります。

 

また、24,000社の内、約40%は「事業承継の目処が立っていない」or「廃業予定」です。

24,000社 × 40% = 9,600社

9,600社は廃業の可能性がある、という事です。

【経営者が60歳以上の企業の事業承継に対する状況】

トレンドに流されない

 事業承継は重要なのは分かります。ただ、通り一辺倒に「事業承継しましょう」というのもどうかと思っています。様々な企業を見ていますが、事業を承継すべきじゃない企業も多くあります。債務超過に陥り、収益性にも乏しい企業が単に事業承継したところで、抜本的な改善になる訳がありません。もちろん、そのような企業の抜本的な改善指導をするのが私達経営コンサルタントの使命でもあるのですが、決して容易な事ではありません。非常に冷たい言い方になりますが、そのような会社の事業承継を後押しするのではなく、むしろ「創業」の支援に力を入れるべきかと思っています。

 事業承継で最も問題なのは、「日本経済・地域経済にとって残す価値のある企業が、後継者がいないがために廃業に追い込まれる」事です。これだけは避けなければなりません!逆に、後継者がいる会社に、事業承継支援(?)を名乗って、口出しするのは少し違う気がします。支援(機関)側の都合で「事業承継=承継を機に事業改善」だと考える風潮がありますが、私は反対です。「事業承継」と「事業改善」はどちらもとても体力のいる事ですし、「事業改善」は「事業承継」とは関係なく常に取り組む事です。同時に取り組んで、中途半端な改善策になるくらいなら、完全に切り離して対応すべきです。